ブランド関連情報2018年 Vo.1
こんにちは!コラム担当の松井です。今回は今更ながら『ブランディングの重要性について』考えていきたいと思います。
長文となりますが、最後までお付き合い頂けますと幸いです。
早速ですが最近、『ブランディング』という言葉を聞く機会が増えてきたと感じています。
この記事を読んでいるあなたも、
『ブランディング』というキーワードにピンと来て、
関心を寄せているのでは無いでしょうか。
過去、80年代にあったCIブームから約30年。
何故、今、またブランディングに注目が集まっているのか、
現代の状況や課題からなるべく解りやすく解説していきたいと思います。
一つの考え方として参考にして頂けたら幸いです。
※お急ぎの方は最後の『おさらい・まとめ』だけでもご確認下さい。
※国民の8割以上がインターネットを活用(出展:総務省データ)
いきなり今更感のある話で恐縮なのですが…
ここ10年位でスマホの普及もありインターネットの利用率も急激に高くなってきています。
スマホだけでなく家庭用ゲーム機やテレビなどもオンライン化し、一日の中でインターネットに触れている時間がとても増えていると感じます。
出かけている時も街看板、電車内、ショップ内のサイネージ等、すごい勢いでインターネット領域が拡大してきています。
逆に考えると、私たちの行動データがオンラインに蓄積し、いつ何処で何をしたのか、 どんな趣味・嗜好をしているのか等、可視化されてきているとも言えます。これらのデータは、ニーズに合わせたネット広告で活用されたり、 自分と似た人の行動から、精度の高いレコンメンドに活用されたりしています。 オンライン化 × データ蓄積によって高い角度で広告コミュニケーションができるようになったのです。
ブランドの認知活動においても、必要な人に必要な広告を出せるようになってきたため、 少ない投資から確実に投資対効果を上げていけるようになりました。 また、認知だけでなくその後のコミュニケーションもSNSやコミニティサイトで簡単に取れるため、 ブランドとの関係構築もしやすくなり、それにかかる費用や労力も激減しました。
これにより、ブランディングの認知活動や関係構築活動における費用や、ハードルが劇的に下がり、 中小企業やスモールビジネスを扱う個人でも簡単にブランディングに取り組めるようになったのです。
出来るようになったこと
つまり、ブランディングに注目が集まる理由の一つとして、
間口が広がり実践できる人や学ぶ人が増えているという事が挙げられます。
※増加し続ける情報量(出展:総務省データ)
前述にあった通りインターネットの普及によって情報量は爆発的に増加しました。
インターネットを扱う人々の趣味や思考も多様化していき、たくさんの情報がネット上に溢れています。
情報量が爆発的に増える一方で、人が1日に認識・処理できる情報量はそこまで変化が無いないため、
認識されていない情報がたくさんインターネット上に増えて来ているということになります。
ネット広告の種類も同様に増えてきています。
検索をしても、Webサイトを見ていても、アプリをしていても広告は常について来ます…
更にインターネットだけでなく、都心に限っては街や交通機関にもたくさんの広告が張り巡らされています。
人が集まるスペースには必ずと言っていいほど広告があります。
スペースが媒体となり、広告で埋められることでまた情報量が増えていきます。
思い返してみれば、1日の生活の中で数十~集百という広告に接触しているのです。
広告が嫌われる理由も解かる気がします…
ただ、自分の“記憶に残っている広告”となると、ごく僅か(3個~5個くらい)じゃないでしょうか。
実はこれ、『見たいものを見る』 という人間(脳)の性質なのです。
自分が気になっていることや、興味のある芸能人、日々悩んでいることなどは、自然に目や耳に入りやすくなります。
それ以外の広告や情報はノイズとして、ほぼ認識されていないのが現実です。
何とか認識されたとしても、人の記憶は曖昧で48時間で約8割弱の情報を忘れてしまうと言われています。
こんな状況を打開するためにも、ブランディングは重要だと考えます。
まず、ブランディングにおいて大切なこととして、
『誰のためのどんなブランドか?』を細かく定義していくことです。
これにより、誰に、いつ、どんな状態で、どんな価値を提供したいのかが決まってきます。
ブランド定義が決まれば『これは自分のための情報だな』とか『この雰囲気何か好きだな』といった、
認知の最初のステップに進むことが出来ます。
では、認知された後忘れてしまうという課題に対しても考えて行きましょう。
まずブランドを定義した上で、一貫して繰り返し発信をするという事です。
何度も繰り返し入ってくる情報は、長期的な記憶として脳に残りやすいのです。
広告を飽きさせないために、表現を変えていくことも大切ですが、
軸になるものを定義しておくことで、『変えて良いもの』『変えないほうが良いもの』が整理でき、
記憶に蓄積を生んでいくことができます。
もう一つ役立ちそうな情報です。
感情の伴う情報(感動・嬉しい・悲しい・怖い等)は記憶されやすいと言われています。
これには情報発信に加え、感情変化を伴うブランド体験を提供していくことが良いと考えます。
例えば、チラシを配るだけではなく、無料でサービスを体験してもらい『楽しい』『得して嬉しい』という
感情を同時に与えることによって記憶されやすくなるのです。
情報過多による課題
ブランディングによる解決
つまり、情報が溢れている現代において、
ブランディングに取り組むことが効果的に働くということです。
情報だけではなく、次は商品の話になります。
大量生産、大量消費の時代を経て商品のレベルは劇的に上がってきました。
同時にどの企業の商品も、素人では違いが解らないくらいに差が無くなって来ています。
平均化、コモディティ化等とも言ったりしますが、選ぶ理由が曖昧になってきていると感じます。
例えば、家電を買う時に、性能の違いがそこまで解らず『ブランド名で買った』と言う人も多いのではないでしょうか。
それに比べ、サービスのレベルはまだ差が目立つ状態に感じます。 人の経験やスキル、意識など(個人差)が反映されやすい領域であることがあるかと思います。 最低限のことは担保できても、起点を効かせ心地よいサービスを提供しようとすると、人に依存してくることが多いのです。
ではサービスのレベルはどう上げていけば良いのでしょうか。 教育や評価、待遇、環境、文化などで人は育っていくと思いますが、 根本的にはインナーブランディングと呼ばれる、企業の内部(スタッフ)に対するブランディングが重要だと考えます。
とても泥臭く根気のいるものですが、すごく簡単な言い方をしてしまうと、
企業のミッションやビジョン、提供すべきバリューなどに共通認識(共感)が生まれ、
自ら体現しようとする姿勢の中で、その企業らしいサービスが提供できるようになると考えます。
※インナーブランディングに関しては別のコラムで詳しく解説させて下さい
つまり、サービスのレベルを上げるためにも、ブランディングは欠かせないということです。
※生活者の消費動向(出展:野村総合研究所データ)
人は現在、商品やサービスに対して何を求めているのでしょうか。
野村総合研究所の消費動向から考えてみたいと思います。調査によると、大きく傾向が分かれていることが解ります。
商品やサービスに対し、価格や購入ハードルの低さよりも、『内容や品質にこだわる』という方が増えています。
『じっくりと比較検討・調査してから買う』というユーザーが増えている背景には、
インターネットによる口コミやランキングなどの閲覧が容易になったからでしょう。
『高くても付加価値があれば買う』というユーザーは、物欲が満たされている現代で“もの”を買うというより、 体験や希少性など“こと”を買う傾向にあると考えます。 つまり、基本的に購買行動においては『こだわる』『調べる』『付加価値があればお金出す』ということです。
※マズローの欲求段階説(出展:wikipedia)
次に人の欲求から考えてみましょう。有名な説でマズローの欲求5段階説というものがあります。 人間の欲求は階層になっていて、1つひとつの欲求を満たしながら階層を上げていくという考え方です。
近年であれば、SNSの普及によって承認欲求(人から認められたい)が容易に満たせるようになってきていると感じます。 自分の食べたものや、言った場所、考えなどをSNSにアップし、共感を得たりコミュニケーションを取ることが容易になりました。 その半面、SNSに疲れてしまう人も増えているかと思います…(私もFacebookはほぼ連絡用に使っています)
象徴的な出来事も合わせて紹介させて頂きます。
少し前の言葉で『意識高い系』と揶揄された学生たちも、自己実現欲求が高まる社会の中では、
必然的なことで今後多数派になるのでは無いかと思います。
アナと雪の女王では『ありのままの』というフレーズが流行ったり、『君たちはどう生きるか』という自己の人生を問われる書籍が時代を超え、
多くの人に受け入れられるようになったのも自己実現に向かう人が増えたからだと考えています。
人の欲求に対して
つまり、ブランディングによってこのような“こと”を生むことが出来れば、
人から受け入れられやすいものになると考えます。
働き方改革が象徴するように、企業では様々な人たちが働けるように取り組んでいるかと思います。
産休後の女性やシニア、外国人、障がいを持つ方の雇用であったり、
そもそも社員雇用が難しく契約社員、アルバイトなど雇用形態も増えています。
職種に寄りますが年々フリーランスの数も増加しています。
複業も増え、企業に属さず自由に働くという人も増えてきそうです。
これだけ多様性が出てくると統制を取るのはすごく難しいでしょう。 全体を包括しようとすると制度やビジョンは曖昧になり、スタッフからすると『何を言ってるのかよく解らない』状態に… このまま放って置くと帰属意識が薄れていき、給与や待遇などの実利だけで動く人も増えてくるでしょう。
ただでさえ採用が難しい時代、獲得した人のマネジメントも難しくなってくる...
今こういった課題を抱える企業が多いのではないでしょうか。
こんな状況を打開するためにも、ブランディングは重要だと考えます。
価値観が違い、働く場所やタイミングも違う人達を、企業の色に染めてマネジメントするのは難しいでしょう。 すでに労働環境、評価制度、教育制度、採用方針などの見直し・改善を行っている企業も多いと思いますが、 まずは、ミッションについて改めて深掘りした上で明確に打ち出していく事が重要だと考えています。
ミッションの深掘り
ミッションが明確になってきたら、ビジョンとバリューも整理しておきましょう。 最終的にどうなりたいのか、社会や関わる人にどうなって欲しいのか、そのためにどんな価値提供をしていくのか。 ここに独自のブランドストーリーが生まれてきます。
このようにブランドを定義することによって、『何故ここで働いているのか』『ここで何を実現したいのか』
などが考えられるようになり、ミッションリンク(共通目的)が生まれていきます。
これらによりブランドと人の結節点を強くしていくのです。
待遇や給与でのマネジメントでは、より条件が良い企業に短期的に人が流れてしまうので、
ブランドの観点を軸に取り入れてみてはどうでしょうか。
国内市場が縮小していくと言われている時代を背景に、海外に進出する企業が増えてるかと思います。 最近特に、グローバルに向けたリブランディングが増えているのでは無いでしょうか。 それらは大手企業に限ったことでは無いと思います。日本製の部品を扱う町工場でもグローバル対応は進んでいます。
元々は日本市場で戦えれば良かったので、技術はあっても、デザインやコミュニケーションは国内で最適化されていました。 日本製品と海外製品を比べると分かると思うのですが、海外(英語圏)の商品は商圏が大きいので、 誰でも解りやすいようにユニバーサルデザインを取り入れているものが多いです。
そうなると、元々国内に特化して作られたデザインやコミュニケーションは、 グローバル対応するためにチューニングが必要になるのです。 ただ翻訳すれば良いと言うわけではなく、様々な国、状況が違う人が扱う前提で考えて行かなくてはいけません。
グローバルブランドの特徴
※ブランドコミュニケーションにおける特徴
時間があれば合わせて読んでみて下さい。
インターブランド「Best Global Brands 2017」レポート
※グローバルブランドに対する考察なども掲載されています
こういったグローバル化の社会背景も、ブランディングが今注目されている理由の一つかと思います。
キーワードで振り返る
これ以外にもたくさんありそうですが、今私が思いつく要素を上げさせて頂きました。
これからブランディングに取り組まれる方や、勉強する方のヒントになれば幸いです。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
コラム担当:松井
ブランドプランナー協会 理事 兼 講師 ブランドデザインを中心として活動しています。日々、実践し習得した知識・経験をお伝えしていきます。