ブランディングテクノロジー株式会社

ホーム › ブランディング事例

ブランディングテクノロジー株式会社のリブランディング全行程を大公開します!

協会事例・特集レポート

本記事は2018年11月1日にブランディングテクノロジー株式会社によって、行われた社名変更、
及びリブランディングの内容をまとめたものです。本協会の講師である、木村、和田、松井が関わっています。

目次

  • 1.ブランディングテクノロジー株式会社について
  • 2.何故今、リブランディングをしたのか
  • 3.リブランディングをどうやって行ったか
  • 4.言語の開発・再構築
  • 5.デザインの開発・再構築
  • 6.社内説明と公開前の事前準備
  • 7.どう浸透させていくのか
  • 8.最後に ~本プロジェクトを通じて感じたこと~

1.ブランディングテクノロジー株式会社について


※ブランディングテクノロジー公式サイト

株式会社フリーセルが2018年11月1日に、社名変更を行い「ブランディングテクノロジー株式会社」となりました。

事業内容:
中小企業(BtoB)を対象としたブランディングやデジタルマーケティングを主な事業としています。

設立:2001年8月
従業員:261名(グループ含む)
URL:https://www.branding-t.co.jp/

2.何故今、リブランディングをしたのか

社名の見直しから始まった

創業から名乗っている「フリーセル」という社名について改めて考え直す所から始まりました。
その結果、以下のような理由から社名を変更することを決断しました。

  • 創業から18年経ち大きく成長・変化していた
  • 社名から受ける印象と実態にズレが生じていた
  • 自分たちの強みや事業ドメインを伝えるのに時間がかかった
  • ステークホルダーを拡大させていくタイミングだった etc……

「ブランディングテクノロジー」という社名

いくつかの候補が出る中で協議を重ね「ブランディングテクノロジー」に決まりました。
自分たちのバリューや得意領域を分かりやすく定義した社名からは、さまざまな効果が生まれることが想定されました。

  • 社名だけでなく事業ドメインを含む認知スピードが向上する
  • 事業活動との親和性が増し営業力が向上する
  • 採用活動に対しても高いマッチングを発揮する
  • 組織の投資や意思決定においても選択集中しやくなる
  • ビジョンが明確になり組織のエンパワーメントが向上する etc……

社名変更は非常に影響範囲が広く、積み重ねてきた認知が一部失われたり、ネガティブに捉えられることもあります。
業績の悪化や不祥事などで社名を変える企業も少なくないからです。
そのため、さまざまな視点から慎重に検証しながら行う必要があります。
今回は、課題も明確になっており、更なる成長を考えて変更に至りました。

社名から企業ブランド全体の再構築へ

社名変更に伴い、ブランドロゴやブランドメッセージを始めとする、企業ブランドを構成する要素の再構築を実施しました。
企業として方向性が変わったわけではないので、一つひとつ整理し必要があれば変更するという流れで行いました。
期間としては約半年間ほどかけ、外部公開にまで至っています。

3.リブランディングをどうやって行ったか

プロジェクトメンバー

以下のメンバーを中心にプロジェクトを進行させました。
適宜、経営チーム(各部門長)を加えて協議したり、現場メンバーを巻き込みながら行いました。

人選に関してはブランドの再構築だけでなく、
その後の浸透施策も考え、人事、広報などと接続できるメンバーにしています。


※経営戦略会議の様子

  • 木村 裕紀(全体統括 / 意思決定)
  • 黒澤 友貴(経営戦略 / プロジェクトマネージャー)
  • 和田 裕史(コピーライター)
  • 松井 寛志(アートディレクター / デザイナー)
  • 澁谷 剛幾(Webディレクター)
  • 北浜 貴資(Webデザイナー)
  • 内山 一彦(人事戦略)

キックオフ

プロジェクトの目的や背景、フェーズ、影響範囲や進め方、メンバーの役割とタスクなどを確認し、プロジェクトがスタートしました。
また、プロジェクト進行に必要なタスクや課題管理、スケジュール表などのドキュメントを作成し、
適宜コミュニケーションやMTGを設けながら進めていきました。

調査・分析

現場メンバーに関しては、定期的に行っている組織アンケートの確認と、キーパーソンへのヒアリングを実施しました。
お客様に関しては、回収していた顧客アンケートの確認と、担当者による受注経緯や理由を日常からシェアし合っていました。
それらの内容をまとめ、経営戦略会議で協議し合っていきました。

4.言語の開発・再構築

調査結果からキーワードを抽出

調査・分析フェーズから上がってきたキーワードをグルーピングし、要点をまとめていきます。

市場調査から見えた傾向

ブランドコミュニケーションにおける業界調査も実施しました。各社の傾向を把握しポジショニングを設計します。

※抽出したキーワード郡(一部)
※各社のブランドコミュニケーションを確認(一部)

表現の方向性

自社視点 × 市場視点を整理し、自分たちらしいブランドかつ、市場における独自性が出せるよう方向性を設計しました。
今回は以下の言葉をご紹介します。

  • ブランドメッセージ
  • ブランドストーリー
  • タグライン
  • 企業理念・ミッション
  • ビジョン
  • バリュー
  • 人材定義・プリンシプル

ブランド全体を貫く「ブランドメッセージ」

「その想いを、たしかな未来へ」

社内外に対する宣言として、私たちが社会やお客様に「どうなって欲しいのか」
「どうしたいのか」を力強く発信するメッセージとして開発されました。
クライアントの想いやビジョン(=CI)をしっかりと汲み取り、
テクノロジーでカタチに変えていく。そして、ビジネスを最大化させることでたしかな未来を共に創っていく―。
そんなブランディングテクノロジーの強い意思を宣言するブランドメッセージです。

以前のブランドメッセージである「想いに応える、ソリューション。」を更に昇華させています。
新しいブランドメッセージの文末に「。」がついていないのは、
メッセージがそこで終わりではなく、更なる発展や未来を想像しやすいようになっています。

ブランド全体を繋ぐ「ブランドストーリー」

全文は以下公式HPにて掲載しています

創業から現在までの歩みをまとめ、さまざまな困難や成長の過程を可視化しました。
また、これからどんな企業を目指すのか、未来に向けた具体的な考えをまとめています。
社外に対してのブランド理解を促すだけでなく、社内に対しても社歴問わず共通認識を持てるようになりました。

在り方を定義した「タグライン」

「私たちは、中堅・中小ベンチャー企業の経営者様、
歯科院長様と真摯に向き合う事業推進パートナーです。」

ブランディングテクノロジーのスタッフと一緒に仕事をすると、
自社の可能性を理解することができ、強みを活かすための経営戦略や事業を拡大するためのアイディアがひらめく―。
私たちは、常にお客様の想いに応える心強い存在であり続けるという意味が込められています。
※タグラインに関しては「社長様」を削除。微調整に留めています。

企業理念・ミッション

「共存共栄の精神で世の中に新たな価値と笑顔を創出します」

この理念には社外に対してだけでなく、「全スタッフがお客様に貢献し、
人間的成長と物心両面の豊かさを創り続けます。」という意味も込められています。
※企業理念に関しては変更していません

ビジョン

中期:「ブランディングテクノロジー経済圏の確立」

中期ビジョンは6年後をイメージして再定義されました。
経済圏の定義として「お客様、スタッフ、関わる人々の成長と成功を引き寄せ、
社会から求められるプラットフォームとなる」としています。

長期:「日本とアジアの発展に貢献するインキュベーションカンパニー」

長期ビジョンは10年後をイメージして再定義されました。
現在行っていることから、3年後、6年後と計画を明確にしていく中で、見えてきた姿を明文化しました。

バリュー・USP

「フロント人材 × ブランドファースト × 5steps」

私たちの強みは、中堅・中小・ベンチャー企業様に対し、
独自のフロント人材が、ブランドを軸にテクノロジーを駆使し、
社内外のブランディングを総合的に支援できること、と定義しました。

調査でさまざまなキーワードが出てくる中、競合を重ねながら優位性を探っていきました。
調査の過程で分かったことから、人材定義にも繋げています。

人材定義・プリンシプル

私たちのバリューのコアであり、戦略においても最重要なのが「人」になります。
この「人」に対する行動や思考の原理を定義し、5つのプリンシプルにまとめています。
各項目に対し細目をコンピテンシーという形で定義しました。

教育、研修制度との連動だけでなく、人事制度全体と紐づけ、ブランドを体現する「フロント人材」を育成しています。

  • 人間力
  • マーケティング思考
  • プロジェクトマネジメント
  • コミュニケーション
  • プレゼンテーション

5.デザインの開発・再構築

VIの整理とパーソナリティ

言葉の開発・再構築を終え、企業におけるMI(Mind Identity)や、BI(Behavior Identity)が明確になったら、
VI(Visual Identity)の開発に向け再度キーワードを整理していきます。

この段階になると、より鮮明にブランドのパーソナリティ(人間的特性)を捉えやすくなります。
的確にパーソナリティを捉えた上で、デザインやコミュニケーション開発を行うことで、 一貫性を出すことができると考えています。

※キーワードからトーンに落とす
※キーワードを出し合いパーソナリティを捉える

社名の特性

新社名に関して一つ大きな課題がありました。社名がやや長いということです。
・フリーセル(5文字)
・ブランディングテクノロジー(13文字)
この点を解消するため、ロゴデザインにおいていくつか工夫したことがあります。

  • やや幅の狭いフォントを使用する
  • 頭文字を大きくし文頭を追いやすくする
  • 単語で改行し可読スピードを向上する

その他、略称をこちらから指定する(ex.ブラテク、BTなど)という意見もありました。
しかし、一つひとつ意味を持ってつけられた社名であり、認知もされていない状況から略称にしてしまうのは、
意図が伝わらなくなってしまう懸念から、基本的に略称は使用しないと決めました。

ブランドロゴの検証

これまでの情報を全て整理し、適切なデザインに落としていきます。
まずは、メモにラフレベルで考えられる案を書き起こします。そこから、形になりそうな案をデザインソフトで起こします。
ロゴを構成する文字や図形などの要素、一つひとつにバリエーションをつけながら、ベターな表現を探っていきます。

最終的に残った3案を、経営戦略会議で協議し1案に絞りました。
残った1案に関しても再度さまざまな角度から検証し完成させました。

※配色の検証を繰り返し行いました
※オリジナルのタイプデザインを開発

完成デザイン

※完成したブランドロゴ
※ブランドロゴの展開(一部)
※ブランドメッセージ有り
※事業領域を表したグラフィック

デザインコンセプト

お客さまの想いやブランドをしっかりとくみ取り、テクノロジーの活用で確かな未来に導く姿勢をシンボルに込めました。スピード感がありながらも、有機的で柔らかさも兼ね備えたフォントを開発。配色にも堅実さと、温かさを感じる2色のブルーを採用。フリーセルのブルーを継承し、創業からのブランドを未来へと繋げました。

ブランディングテクノロジーは、お客様、スタッフ、パートナー、関わる全ての人の「想い」を「たしかな未来」へ導いていきます。そんな私たちの在り方を可視化しました。

タッチポイントに反映

完成したブランドロゴ、ブランドメッセージを軸に、さまざまなタッチポイントに落としていきました。

※ステッカーを作成し社内外に配布しました
※ノートパソコンを持って移動するシーン
※社名変更をお知らせするチラシ(ハガキは別デザイン)
※各サイズの封筒デザイン
※3つ折りのパンフレット
※あえてロゴを伏せた社章デザイン

6.社内説明と公開前の事前準備

プロジェクトレポートの作成

これまで行ってきた企業ブランドの再構築をまとめたレポートを作成しました。
社名変更の背景や目的、今リブランディングを行う理由から、開発された言葉やデザインなどをレポート化しています。

説明会の実施

説明会は経営チーム(部門長)と代表木村を中心に行われました。
各部門長が自分の言葉で現場メンバーに説明することが重要になります。
それは、インナーブランディングを促進する上で、部門の方針や運営を行う部門長が、
ブランドを意識してマネジメントをしなければ、代表がいくらメッセージングしても浸透が進まないためです。

社名変更に伴う調整業務

社名変更やブランドロゴの変更を行うと、非常に多くの調整業務が発生します。
当社では、大きく5つのグループに分かれ調整業務を進めて行きました。
1人で全体把握をするのは難しいため、連携を図りながら進めて行きました。

  • 申請が必要な登記・契約関連
  • エントランスや看板などのオフィス関連
  • 名刺や封筒などのツール関連
  • WebサイトやSNSなどのメディア関連
  • メールアドレスやネットワークなどのインフラ関連

※タスク数にして100弱発生しています

社名変更の案内について


※ハガキに社名変更の案内と背景を記載

2018年11月1日の外部公開に合わせ、ハガキの送付やチラシの配布を行いました。
メールでの案内もあったので定型文や署名などの設定も事前に展開しています。
公式HPでも社名変更の案内や、ブランディングの内容が閲覧できるよう、コンテンツを充実させたり、プレス媒体との連携も図っています。

7.どう浸透させていくのか

社内の浸透計画


※人材育成のプロセスを可視化したマップ

ポテンシャルとパフォーマンス両面から高めることで、
ブランドを体現し伝導する人材(エバンジェリスト)を増やすことを目的としています。

人材定義をベースとした教育、考課、採用の施策を考え、各タッチポイントに落としていきます。新卒、中途、入社1年目、2年目、3年目などフェーズごとに施策を変えていきます。
スキル、マインドの成長を促すだけでなく、ミッションリンクやエンゲージメントも高まるよう設計しています。
経営戦略(黒澤)と人事(内山)、広報(松井・和田)の連携を図っています。当社ではサーベイを活用することでKPIを定量化し改善活動を行っています。

社外の浸透計画


※ブランドコミュニケーションを可視化したマップ

社外へのブランド浸透度を高めるだけでなく、バリューを最も発揮できるお客様に対しエンゲージメントを高め、ロイヤルカスタマーを増やすことを目的としています。

ロイヤルカスタマー、メインターゲットのペルソナを具体化し、各タッチポイントに落としていきます。マーケティングファネルごとに施策を変えていきます。
CXM(顧客体験価値)の観点からLTVを向上させるだけでなく、顧客とのコミュニケーションからエンゲージメントを高めていきます。
当社では部門ごとにKPIを設定し改善活動を行っています。

8.最後に~本プロジェクトを通じて感じたこと~

特別なことは何もないと思った

今回の企業ブランドの再構築、浸透活動に関わる中で 感じたことを振り返ってみたいと思います。
全ての工程に関わる中で、改めてブランディングを学ぶことができました。
実践を繰り返すことの大切さを再認識しています。

ブランディングを実践し、学ぶと言っても特別なことは何もしていません。 「誰でも今日から実践できる」と思っています。
一部、デザインを作ったり言語の体裁を整えたりすることは、 専門的な知識が必要になりますが。
基本的には、「考える・行動する」ことができれば、 あとは、「やるか・やらないか」だけだと思っています。

もう少し具体的に説明したいと思います。
以下のようなことを、主観的、客観的に考えて具体化するだけでも、
ブランディングに繋がってくると思います。

  • 自分たち(会社)が、何をどうしたいのか。
  • 何故それをやるのか。
  • 誰にどんな価値や課題解決を提供したいのか。
  • それによって、いつどうなりたいのか。etc……

こういったことから逆算し、粒度をどんどん細かくしていけば、 今日やるべきことや、選択基準が見えてきます。
昨今、大企業やBtoCだけでなく、中小企業やBtoBの企業でも、 ブランディングは重要と言われています。
全てのビジネスマンに必要なスキルとして、 実践するプレイヤーが増えたら良いなと考えています。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。
ブランディングを学習したい方は、是非毎月開催している無料講座にてお会いしましょう!